「ニャオハ立つな」の本質
昨年、ポケモン最新作スカーレット・バイオレットの最初の3匹のポケモン(以下、「御三家」)の中で、くさねこポケモン「ニャオハ」が注目を浴びました。
「ニャオハ立つな」というインターネットミームは、SNS流行語としてもノミネートされるなど、インターネットユーザーのポケモンへの高い関心が伺えます。
しかし、私の観測範囲では、「ニャオハ立つな」の背景にある根幹に触れた言及が少ないように思えたため、私の視点で「ニャオハ立つな」問題について書いてみます。
まず、はじめに、インターネット上では、「ニャオハ立つな」について、概ね、以下の通り解釈されていることが多いです。
二世代前のサンムーンにおいて、かわいいねこポケモンである「ニャビー」の最終進化系が、悪役プロレスラーをモチーフとした「ガオガエン」になってしまったことがあったから、同じねこ御三家の「ニャオハ」の最終進化系は「ガオガエン」のようになったほしくない。
簡単に言うと、「ニャオハよ、ガオガエンみたいになってくれるな」です。
この「ガオガエンみたいになってくれるな」というのは、大多数のポケモンプレイヤーにとっての共通理解だったようで、それを短く端的に表したのが、「ニャオハ立つな」という7文字だったと考えられます。
もちろん、ガオガエンが好きな方もいらっしゃるとは思うのですが、かわいい猫ポケモンが猫特有の四足歩行を捨て、いかつい悪役プロレスラーの容貌になってしまったことにショックや戸惑いを覚えたプレイヤーが多かったということでしょう。
ですが、よく考えてみると、この「ガオガエンみたいになるな」には様々な思惑が含まれる可能性があります。
【「ガオガエンみたいになるな」の要素分解】
①猫ポケモンは進化しても二足歩行になるな
(=猫ポケモンは進化しても四足歩行のままでいてくれ)
➁かわいい御三家の進化系を、いかついビジュアルにするな
③御三家の進化系を擬人化モチーフにするな
実際にニャオハの進化系を見ながら、これらの要素について考えてみましょう。
ニャオハの最終進化「マスカーニャ」は二足歩行にはなったものの、
妖艶なデザインが結構人気だったため、手のひらを返した人も多いとか。
ケモナーに刺さったんですか?
こういった人は①の意味で「ニャオハ立つな」と言っていたつもりだったけど、
実際には、➁の「いかつくなるな」だったということでしょう。
二足歩行かどうかはさほど重要ではなく、かわいければOK、ってことです。
ここで、ようやく本題に入れます。
私が思っていた「ニャオハ立つな」の本質は③なのです。
つまり、御三家の最終進化系を擬人化モチーフにするなということです。
(どうもネット上でも、この点に触れてる人が意外に少ない気がします。)
どういうことかというと、ポケモンの御三家の最終進化系は第六世代から擬人化モチーフが続いており、今作、第九世代も引き続き擬人化モチーフ路線を踏襲しました。
マスカーニャは「ネコ」+「マジシャン」
ラウドボーンは「ワニ」+「シンガー」
ウェー二バルは「カモ」+「ダンサー」
になっていますね。
マジシャンも、シンガーも、ダンサーも、人の職業です。
「動物が進化し、人間の職業に就業する」という最近の御三家の傾向なのです。
この傾向が始まったのは第六世代(XY)からであると考えています。
画像で確認しましょう。
【第六世代】
ブリガロン:「ハリモグラ」+「鎧・甲冑」
マフォクシー:「キツネ」+「魔法使い(魔女?)」
ゲッコウガ:「カエル」+「忍者」
【第七世代】
ジャナイパー:「フクロウ」+「スナイパー/アーチャー」
ガオガエン:「ネコ」+「ヒール(悪役)プロレスラー」
アシレーヌ:「アシカ」+「人魚」 (もはやアシカではない?)
【第八世代】
ゴリランダー:「ゴリラ」+「ドラマー」
エースバーン:「ウサギ」+「サッカー選手」
インテレオン:「カメレオン」+「スナイパー/エージェント」
……ということで最近の御三家の最終形態は、
「動物」+「人間の職業」が基本の型になっていることがわかりますね。
ここに気がつけば、最近の御三家がほとんど二足歩行になることの本質は、
人間の職業の要素をキャラクターに落とし込んでいること、
つまり、ある種の「擬人化」が原因になっていることがわかります。
ゲッコウガについては、忍者の擬人化に加えて、元のカエル要素が強く残っているため、二足歩行でもあるし、四足歩行でもあるという秀逸な良デザインとなっていて、リザードンに匹敵するほどの超人気ポケモンです。
ここで、第五世代までの御三家を見てみましょう。
うーん、思ったより二足歩行は多いものの、
第五世代までの御三家ポケモンには、職業の要素はありませんね。
純粋に「動物らしさ」が押し出されたデザインが多いです。
厳密にいえば、第五世代は、ジャローダに「西洋」、エンブオーに「中華」、ダイケンキに「和」の要素が含まれているため、職業路線の過渡期として見ることもできるのですが、明らかに人の職業が含まれるようなことはありません。
ということで、画像を見てみると、御三家のデザイン傾向が第六世代を境に擬人化路線にシフトしたということが明らかに見て取れると思います。
個人的には、ゲッコウガ以外の御三家の擬人化路線というのがあまり好みではなく、
動物は動物のまま、カッコよく、あるいは、かわいくデザインしてほしいと思います。
勘違いされたくないのですが、最近のポケモンのデザインの批判をしたいわけではありません。私はポケモンを全世代プレイしており、昔のポケモンにも、最近のポケモンにも、思い入れがあります。
ポケモンのデザインの元ネタには、初代から、コイルやポリゴンのような人工物も含まれており、そういったデザインの幅の広さや、遊び心が魅力だと思っています。
ですが、最近の御三家の擬人化モチーフは正直あまり好みではありません。
御三家は、はじめてポケモンを遊ぶ子供にとって思い入れが強いポケモンです。
どうも最近の御三家ポケモンは擬人化モチーフを入れるルールに固執しすぎていて、
カッコいいポケモンやかわいいポケモンが減っている気がしています。
御三家の最終進化系は、もっと王道を意識して、擬人化に囚われず、カッコよく、かわいくデザインすべきと思います。
だってかわいいと思ってニャビー選んだ子供が、ガオガエンに進化したら、そりゃショック受けるでしょ。。なんでネコが何の脈絡もなく、ヒールのプロレスラーなるんだよ。。
ゲッコウガという大当たりの例外がいるので、擬人化の要素を入れつつも、カッコよく仕上げるというのも可能だとは思うのですが、
基本的には、最近の御三家は王道をハズしたデザインであると思わざるを得ません。
決して、「最近のポケモンはポケモンっぽくないよね~」ということが言いたいわけではなく、「御三家の擬人化路線そろそろやめてほしいよね~」と思っているというだけの話なのです。
以上、ポケモンのデザインに関する個人の好みの話でした。